NHK(日本放送協会)
- 協会概要
従業員数・予算規模において日本最大の放送局。「公共の福祉のために」放送を行う点でほかのテレビ局とは違う。また職種別採用であるため、たとえばディレクターを希望すれば入局後すぐにディレクターとして実践的な経験をつむことができる。(NHKにはアシスタントディレクターというものは存在しない。)入局後のキャリアも職種によって異なり、ディレクター職の場合は3年間ほど地方局で放送の基礎を学んだあと、再び東京に戻り各番組に配属となる。体質の古さゆえに融通の利かないことも多いようだが、最近で言えばSNSとの連携やインターネット上におけるオンデマンド配信においてはむしろ民放よりも積極的な印象がある。福利厚生も充実しており、給料は民放よりは低いものの大手メーカーよりは高い。人々の心の豊かさにかかわる「番組づくり」をしたいという思いがあれば、その影響の大きさとともにこれ以上の環境はないであろう。
- 採用について
ディレクター・記者・放送管理などの職種別採用である。2月下旬にエントリーシート締め切りと民放よりかなり遅め。エントリーシートを提出後、通過者は面接と筆記試験を受験する。面接回数・グループディスカッションの有無は職種によって異なるが、ここでの面接官は希望する職種の上司となる。
エントリーシートの設問内容も職種によって異なり、各自プリントアウトして手書きで記入し郵送する。ディレクター職(教育・教養)の場合は1.NHKでやってみたいこと、2.「NHKのニュースあるいは番組」について考えること、3.自己PRなどエピソード、4.最近関心をもった社会的な出来事や疑問に思うことについての考え、5.忘れられない失敗体験、6.自由記述欄であった。私はディレクター職で選考に参加した。参考であるがESの通過率はディレクター2割、記者6割とのこと。D職の場合は「NHKでどんな番組づくりをしたいか」「それがなぜNHKでなければならないか」をしっかり伝えられるかが重要であると思われる。なお民放と同じくアナウンサー採用に関しては不透明さがあるため、例外と考えてよい。 - 筆記試験
4月頭の平日に最寄の会場で全国一斉に受験する。さながらセンター試験のようだ。私服でかまわない。内容はSPIに一般教養、英語、論文、性格検査である。ここで伝えたいポイントはひとつだけだ。(D採用の場合)とにかく論文で伝えたいテーマをいくつか持っておいて、800字60分で伝える練習をしておこう。それだけでディレクターの場合は十分だ。過去の例でいくと「時代を切り開くためのヒント」や「○○の責任」などがテーマであるが、これを見てもわかるようにいくらでも準備した自分の主張につなぐことができる幅広いテーマである。放送にかかわる人間としてのメッセージや提言を含めて、訴えるもののある文章を書けるよう練習しておこう。ことディレクター職に関しては一般教養はあまり関係ないと思われる。自分自身ほとんど対策をせず挑み全くといっていいほど時事問題は解けなかったが、通過することができた。論文は繰り返し練習すれば必ずうまくなる。ディレクター志望の人はとにかく論文対策だけはしっかりやっておこう。
蛇足ながら私が書いた論文の内容はある事件を題材に、自身が感じたネット上と現場の声との剥離をテーマに、映像メディアの重要性について論じたもの。個人が簡単にブログなどを書くことができるようになり、文字の情報があふれ、正しい情報が見つけづらくなった。意見は活字化することで説得力が増してしまう。しかし現場の声は違うということがよくある。その中で映像メディアにおける「生の声」というのはより一層の重要性をもつのではないか。これから映像メディアも大衆化していくなかで、制作側と受信側双方の映像リテラシーはますます重要になっていく、といったような内容を書いた。 - 一次面接
人によって面接が先だったり筆記試験が先だったりする。D職の場合は1対1のブース形式での面接。30分と一次面接にしてはかなり長い時間をとってもらえる。自分はこの面接が就活で初めての面接であったためかなり緊張していたが、会話形式で少しずつリラックスさせてくださった。中学時代、高校時代と振り返り、どんなことに興味をもつ人間なのか探るような内容からはじまる。エントリーシートにはところどころにマーカーが引いてあり、読み込んだ上での面接であることがうかがえた。そして「どんな番組がつくりたいか?」「なぜそれが必要?」「それは民放ではなぜだめなのか?」「それだとこういう問題があるんじゃないか?」「それは民放の○○と一緒じゃない」などひたすら深堀の質問になった。最後のほうになると答えに窮してきてしまい「うんわかったありがとう、ちょっといじめるような質問してごめんね」で終了。疲れがどっと出た。終わりに質問タイム。とにかくD職への熱意だけは伝えきった。
ポイントとして、他社の選考状況を聞かれるがそこからNHKへの本気度を測っているように思われたので、あまりにも関係ない業界は言わないほうがベターである。自分のように民放を受けてない人はしっかりその理由も言えるようにしておくこと。 - 二次面接
一次が通過した人には指定された日時に電話がくる。まさかくるとは思っていなかったため驚く。電話で日時と場所を指定される。形式は一次と同じブース形式の面接で1対1の30分。内容としてはほぼ1次と同じと思ってよい。出だしから何を答えても「それだけ?」と想像以上の深堀に焦る。「最近NHKで問題だと思うことは?」の質問に苦し紛れで「デジタル化の必要性が伝わっていない」と答えたら、「それ本当に必要あると思う?」などと聞かれ、うまく答えられず。生半可な考えで答えてはいけない。また「好きな番組は?」「○○など・・」「そんなのいつもやってないでしょ。他には?」「○○など・・」「それなら民放でいいじゃん」と完全にノックアウトされてしまったので、好きな番組とその理由を具体的に考えておくことも必要であろう。完全に相手のペースで自分の熱意を伝えることができなかった。伝えたいことを一次以上に固めておくことが重要である。ここを通過すると2.5次のグループディスカッションへと駒を進めることとなる。
- コメント
他の一般企業に比べ、自己PRよりも「何がやりたいか」が全体的にかなり重視される選考だ。職種の特性を考えても当然であろう。面接時は具体的に「どんなテーマ」で「何を対象」に「何を伝えるため」に番組づくりをしたいかのイメージや案をしっかりもっておく必要がある。正直1対1のため相性はかなりある。とにかく「もう一度会って見極めさせよう」と思わせるよう熱意だけは伝えきりたい。民放はだめだったけどNHKは受かったという人や、民放は通ったけどNHKだけは通らなかったなどいるので、他のキー局とはかなり毛色が違う選考といっていいだろう。逆に考えればマスコミ志望でない人にもチャンスはあるともいえる。